少年愛者、歪んだ性癖、犯人の異常性などと世間から恐れられた事件。
1957年4月2日の夜、銭湯に行くと行って出かけたまま行方不明となり、
殺害されバラバラにされたうえ、金魚鉢や水槽の容器にホルマリン漬けに
された状態で見つかりました。
被害者 巣山和利くん(当時12歳)
加害者 林邦太郎(当時26歳)
被害者、加害者ともに父親は著名人でした。
この事件をモデルに書かれた「ガラスの愛」では、少年愛に走った<
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倒錯した性…そのように書かれていました。
犯人が欲しかったのは少年との"愛"でしょうか?
私は"心"だと思いました。
いつも誰かに依存し、自分の事を認めてくれる人を探していた男と、
誰かに必要とされたいという想いを抱えていた少年の、
こんなにも悲しいと思った事件はありません。
林の父親は囲碁棋士として、
息子が世間から猟奇的殺人事件と言われる事件を起こしても、
82歳の亡くなるまで、
囲碁というものへの執着心で、失わないよう、しがみつき続けました。
その強い心が少しでも息子への関心や、愛情へと傾けられていたら、
息子が人や猫に執着することはなかったかもしれません。
被害者となった和利くんの父親は、
父親と言っても、
和利くんが生まれてすぐ、「アメリカでレスリングを学ぶ」
と言って
出たまま行方不明となっており、
母親は失踪届けを出し、期限が過ぎたため、
自動的に離婚が成立しています。
父親が日本に戻ってきたのは、
事件から13年経った1970年です。
1980年に脳卒中で他界しました。
和利くんの母親はというと、
父親が著名人だった事でスキャンダルを気にし
警察に通報したのは行方不明になってから2日後でした。
4月2日に行方不明になっていますが、
和利くん親子が引っ越してきたのは3月末です。
引っ越して間がない和利くんに林が声をかけた言葉は、
「友達になってあげるよ」でした。
銭湯では和利くんの背中を流してあげています。
和利くんは銭湯で一緒になった隣の家に住む同級生に
「さっき僕の背中を流してくれた人、昨日も背中流してくれたんだ。
僕、あの人に誘拐されるかもしれない。
僕がいなくなったら、
あの人のせいだからね。
僕、あの人に殺されるかもしれない。
だから、あの人の顔をよく覚えといて。」と言っていました。
気がついたら2人とも銭湯からいなくなっていましたが、
先に帰ったのかと思ったそうです。
おそらく、
隣に引っ越してきたばかりの子は変なことを言う子だなあ
ぐらいにしか思わなかったのではないでしょうか。
母親は引っ越して間がないのに帰らない息子。
隣の家には同級生です。
「息子を知りませんか?」と訪ねに行きませんか?
2日も何をしてたんでしょうか?
生活の為と言う理由で仕事でしょうか?
加害者の親も被害者の親も自分のやりたい事に夢中で、
子供に無関心な親だった。
私はそう思いました。
父親がどれほどの著名人だったのか知りませんが、
私はどちらの親も大嫌いですね。
和利くんからしたら、
父親と言うだけで、自分や母親を捨てたクズ野郎でしかありません。
それでも日頃から知りたくもない父親の話を母親から聞かされていて、
その話はまるで、応援し続けるファンのような口ぶりに、
嫌気が差していたんじゃないでしょうか。
息子の自分よりも会うことのない男をいつまでも迷惑をかけないようにと、
言われることにうんざりだと、、
自分がもし、父親と同じように
行方不明になったまま帰らなかったとしたら
母親は
父親と息子の自分と、
どちらで頭がいっぱいになるのだろうかと、
確かめたかったのかもしれません。
母親の自分に対する愛情とやらを、、
でも、行方不明になってもまだ、
母親が1番に考えたのは
息子ではなく、スキャンダルになって迷惑をかけたくない
父親のほうでした。
林が自分の思い通りならないと暴力的になるのは知ってはいたものの、
和利くんにとって林は優しく声をかけてくれた人であり、
自分を必要としてくれた事への嬉しさもあった。
林は銭湯で「裸の付き合い」をして、わかりあえる人と出会いたかった。
お風呂と言えば銭湯に行く習慣のあった時代、
裸の付き合いとは、
主に男性同士の精神的な意味で使われていた言葉です。
隠すことなく、飾らず、肩書やお金持ちか貧乏かなど気にせず、
お互いにホンネを言い合えるような付き合いをしようという意味です。
林は明治大学商学部を卒業しており、家も裕福でしたが、
和利くんは母子で生活も厳しい環境で育っていました。
適度な心の距離を保つのが難しかった林は、
和利くんへの執着や嫉妬や独占欲、
いつか誰かに取られたり離れてしまったりするのではないかと、
不安になっていった。
相手から認められる事でしか、
自分の価値を感じられなかったのかもしれません。
和利くんは、そんな林の気持ちは汲み取ってはいたと思います。
林にとって服を脱がせようとしたのは、"心の距離を縮めたい"
和利くんが嫌がったのは、その行為に抵抗があっただけで、
心から突き放したい訳ではなかった。
でも林は、
自分に何か隠し事でもあるのだろうか?
ホンネが話せないのだろうか?
もしかしたら、自分の知らない誰かと
自分よりも仲良くしてるのかもしれない、、
銭湯にいた奴は誰だ?と、、
和利くんから隣の家の同級生と聞いたのではないでしょうか。
行方不明になって数日後、
隣の同級生の家に差出人欄に和利くんの名前が書かれた封書が
届いています。
手紙は便箋一枚にペン書きで、
「○○くん、僕は幸福に暮らしているから安心して下さい。
僕は風呂で流してもらった人に沢山面白いことを教えてもらった」
と、子供らしい字で書いてあったそうです。
手紙では○○くんの名前の文字が誤って記載されていたと、
書かれていましたが、
引っ越して間がなかった事を考えると字を間違えるのは
不思議ではないとは思います。
林は12匹も飼うほどの猫好きでありながら、
飼っていた猫が、窓から数匹逃げてしまった事にショックを受け、
猫が逃げないように、段ボールに閉じ込めるようになり、
やがて衰弱死し、半分は食べたと言われています。
おそらく林はそこでやっと"自分だけのものになった"と
思えたのかもしれません。
何が正しいのか分からず、自信がなく、
心の距離の縮めかたも分からない男と、
自分を必要とされたいという想いを抱えていた少年。
友達が行方不明になった怖い話に出てくる小学2年生の男の子の
家に届いた手紙…
サトリウムへと父が戻る
何も知らずにノックする
そして恐ろしい獣との思わぬ鉢合わせ
良かったー父は結局
生きてもいないのだし
実際にこの事件が
父に降りかかることもない
ーーーー
まるで和利くんが自分や母親を捨てて出て行った父親に書いた
心の日記のように思うのは私だけでしょうか?
生まれてすぐに自分のやりたい事に夢中になり、
行方不明になった父親など死んだも同じで、
息子が殺されてどんな事になろうが、
この事件で父親が何かしらの罪に問われることもない。
「ともない」に引かれた横線ーーーー
そうする事を望まない。
この事件が世間を騒がせ、